「逆くしゃみ」は病気のサイン?
「逆くしゃみ」をご存知でしょうか?
逆くしゃみとは、突然「ズーズー」、「グーグー」という音を鳴らしながら行われる機械受容性の吸引反射のことで、一見、発作性の呼吸困難のように見え、心配になる飼い主も多いかと思います。
多くの場合、数十秒〜2分以内には治り、その後はケロッと何事もなかったようにします。
興奮時に生じることが多く、その他、摂食/飲水時、外に出た瞬間、寝ていたら突然生じるなどのタイミングでも生じることが多いように感じます。
反射であるため、しゃっくりのように自分の意思ではどうにもできません。
生理現象であり問題ないと考えている獣医師や飼い主もいるかもしれませんが、もしかしたら病気のサインかもしれません。
典型的な逆くしゃみの動画です。
逆くしゃみの最後に、カーッと痰を切るような仕草(レッチング)を伴うこともあります。
逆くしゃみは咳やくしゃみとの区別がつきにくいことがあります。
見分けるポイントは
・吸気時である
・口を閉じている
この2点です。咳もくしゃみも息を吐く仕草であり、多くの場合、咳やくしゃみの時には開口しています。
逆くしゃみの受容体
鼻咽頭に逆くしゃみの受容体があり、この受容体が刺激されると反射的に逆くしゃみを生じます。
鼻咽頭とは鼻〜喉頭までの咽頭気道です(イラスト参照)。
(SA Medicineより)
この鼻咽頭の粘膜に炎症や浮腫、機械的な刺激などが生じることで逆くしゃみが引き起こされます。
病的な逆くしゃみとは
- 1日3回以上の頻度
- 中高齢になってから生じ始める
生理的にも逆くしゃみは生じますが、生理的には毎日1日3回以上生じることはまずありません。
チワワやポメラニアンなどの小型犬で多いのですが、若齢時には逆くしゃみの受容体感度が亢進している症例がいると考えられており、この場合には成長とともに頻度が減少していくため、この場合は病的ではないので心配は不要です。
しかし、中高齢になってから逆くしゃみが生じるようになった場合には生理的ではなく、何かしらの病気のサインの可能性があります。
逆くしゃみを生じうる疾患
前述したように鼻咽頭に何らかの刺激がある場合に逆くしゃみが生じます。つまり、逆くしゃみが生じている場合には鼻咽頭に刺激を起こす可能性のある疾患を考えなければいけません。
- 咽頭炎(急性/慢性)
- 鼻腔または鼻咽頭異物
- 鼻炎(慢性/急性)
- 腫瘍(特に鼻咽頭内腫瘤状病変や鼻腔内腫瘍)
- 短頭種気道症候群
- 咽頭気道閉塞症候群 など
急性咽頭炎は感染症や機械的な刺激で生じることが多く、慢性咽頭炎は短頭種気道症候群や咽頭気道閉塞症候群などに併発することを多く経験します。
また、鼻炎では鼻汁が鼻咽頭内に流入することで鼻咽頭粘膜を刺激します。
このように鼻腔〜咽頭領域の疾患により病的な逆くしゃみを生じることがあるのです。
これらの病気はレントゲン/透視検査、鼻鏡検査、CT検査などで診断します。
逆くしゃみ自体に対する治療というよりも、これらの病気に対して治療が必要となり、治療内容は疾患ごとに異なるため、きちんと病気を診断することが非常に重要です。
逆くしゃみを止める方法
逆くしゃみで倒れてしまうほどの呼吸困難やチアノーゼを呈することは非常に稀です(ないことはない)。ですので、無理に止める必要はないことが多いのですが、やはり苦しそうで見ていて辛い、辛そうと感じることはあると思います。
根本的には原因となる病気があれば、その病気の治療をすることで治るはずですが、病気の診断や治療は別にして、逆くしゃみを止めるための方法として
- 喉を撫でる
- 好きなものやご飯などの匂いを嗅がせる
- 鼻の穴を塞ぐ
などの手段があると言われています。これら方法で必ず逆くしゃみが止まるという保証はありませんが、試してみても良いかもしれません。
おわりに
逆くしゃみは生理的に起こることもありますが、実は病気のサインかもしれません。
数秒で治るから大丈夫だと判断せずに、頻度が多い場合には一度ご相談ください。