
異常呼吸音
はじめに
普段の生活の中で犬や猫の呼吸の音を意識して聞いてみたことはありますか?
スースーと寝息を立てて眠る姿、たくさん遊んだ後にハッハッと舌を出して呼吸する姿はとても愛おしいものです。これらの呼吸の音は正常ですが、中には病気のサインとなりうる異常な呼吸の音も存在します。本コラムではそんな異常呼吸音について紹介します。
呼吸の仕組みと異常音が出る理由
犬や猫の呼吸の音を理解する上で、空気の通り道を理解することが重要です。空気は以下の順序で体内を通ります。
外鼻孔→鼻腔→鼻咽頭→喉頭→気管→気管支→肺
正常な気道はこの通り道が十分に広く確保されているため、呼吸の音はほとんど聞こえません。しかし何らかの原因で、この通り道が塞がれたり狭くなったりすると空気の流れが乱れて異常な音が発生します。生じる音は病気の存在している場所、病気の種類によっても様々です。次項では音の種類、その音を生じうる疾患を紹介します。
異常呼吸音の種類と考えられる病気
1. 高調スターター「スースー」「キューキュー」
この音は鼻から喉の入口までのかたい部分が狭くなっているときに聞こえる音です。固定性狭窄、静的狭窄と呼びます。
考えられる病気:
• 鼻腔内腫瘍
• 鼻腔狭窄
• 鼻腔内異物
• 猫の鼻咽頭狭窄 など
2. 低調スターター「ズーズー」「ブーブー」
この音は鼻から喉の入り口までの軟らかい部分が狭くなっているときに聞こえる音です。動的狭窄と呼びます。
考えられる病気:
・短頭種気道症候群、軟口蓋過長症
・咽頭腫瘍
・猫の鼻咽頭ポリープ など
3. ストライダー「ガーガー」「ヒーヒー」「スーヒュー」「ガーヒー」「ヒューヒュー」
この音は喉から胸の外側にある気道のどこかが狭くなっている時に聞こえます。息を吸う時、吐く時、またその両方で聞こえることがあります。
3-1. 吸気性ストライダー「ガーガー」「ヒーヒー」
考えられる病気:
・構造的咽頭・喉頭閉塞(短頭種気道症候群、肥満など)
・喉頭蓋の後傾
・喉頭腫瘍
・気管虚脱
・喉頭麻痺 など
3-2. 呼気性ストライダー「ヒューヒュー」
考えられる病気:
・気管分岐部から主気管支にかけての炎症・腫瘍
・気管・気管支軟化症
・気管支拡張症 など
3-3. 両相性ストライダー「スーヒュー」「ガーヒー」
考えられる病気:
・喉頭虚脱
・喉頭腫瘍
・気管虚脱
・喉頭狭窄
・気管狭窄
・気管内腫瘍 など
4. ゴロゴロ音「ゴロゴロ」「ブツブツ」「ゼロゼロ」
これは気道内に分泌物(痰)が溜まっている時に聞こえる音です。
考えられる病気:
・咽頭炎
・喉頭腫瘍・喉頭炎
・猫のブロンコレア
・心原性肺水腫末期
・肺腫瘍 など
異常呼吸音が聞こえたら
上記のような呼吸音が聞こえたら、犬や猫が呼吸しづらいサインです。命に関わる重大な疾患が隠れているかもしれません。動物病院を受診していただきたいことはもちろんですが、動物の様子をよく観察し、動画を撮影していただくことをお勧めしています。
動画撮影のポイント
・音が生じるタイミング・・・安静時、興奮時、運動時、睡眠時など
・呼吸の様子・・・・・・・・胸やお腹の動き、口呼吸の有無など
終わりに
普段の様子をよく知っている飼い主だからこそ気づける「いつもと違う」が重要です。
その違和感を動画で記録していただければ、病院での診察がスムーズになり、早期の病気発見や治療につながる可能性があります。些細な違和感でもお気軽にご相談ください。